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音楽の話。

サウンド制作をしておりまして、アナログシンセを弾きました。

つまみがたくさんついているような鍵盤楽器です。

音を「ムニュー」っと作るのですが、

今のシンセのように、たくさんの音が出ないので「この音」には「このシンセ」

そのような使い方をします。

 

20代は音楽の仕事をしていたので、

スタジオの完成を待っていたかのように

たくさんのシンセを引っ張り出しました。

 

若い頃のように、指は動きませんが、弾くと気持ち良いの音です。

とても古い音。

古いレトロなシンセサイザーは、趣味や収集的な(ヴィンテージ)としての評価があり、ものすごく高くなってきました。

 

乱暴に伝えると、

アナログシンセは、回路がぐちゃぐちゃしている。

つまみがおおい。古そう。

デジタルシンセは、集積化したチップの中に回路をシミュレーションしているのでシンプル。ボタンがおおい。今っぽいですね。

音が綺麗そう。

 

さらに、今は、

PCの中のシミュレーションしたソフトで音が再現されるし、曲作りもできる。

 

自分は、アナログ、ビンテージについて

いろいろ議論はあるのでしょうけれども、大きく3つだと思っています。

 

1.コンピュータではないこと。

弾いてから、音が出るまでの速さ

特に、鍵盤を弾くまえに、「ぶ〜ん」無駄にノイズが聞こえていて

「楽器である」という意識がスタンバイ状態であること。

鍵盤を弾いた時、

音響的なプツって、音の前に

聞こえるノイズが音の始まりであることとが、人の耳に入る立ち上がり(アタック)の速さではないか。

さらに、弾く前から、「スーッ」とノイズ音が出ているので、

聴覚的にノイズを感じ、気持ちがスタンバイをしているのではないか。

操作がシンプルで、音を選んでぐるぐるつまみを操作し、すぐに応答することが、意識的に感じる体感ではないかとも思います。

自分は、何も鍵盤を弾かない、操作をしない時の

moogのノイズ、808のノイズ、Prophetのノイズをサンプリングして聞き比べました。

無駄なノイズとは思えなくて、

スーとか、ブーとか、ボリュームを上げるとそれぞれの個性で聞こえます。

 

2.太いこと

古いシンセは、電源を入れただけで、ノイズが聞こえます。

掃除機をかけた際には、掃除機に同期したノイズが広がるぐらいです。

音色と重なる、音とノイズがまざると、その音さえも音色ではないか。

人は、そもそも自然界のノイズを常に聞いていて、無音の空間はかなり少ないはずです。

ノイズを意識的に聞くことで、ぬくもりを感じるのではないか。

 

3.エフェクター

残響音や歪みなど、いろいろな加工がついています。

昔は、シンプルで音を出すだけだったのですよね。

残響が多いと、音がぼやけて聞こえるので、もったり感が出ちゃうのかもしれませんね。

 

以前、高層マンションにいた際に、静かすぎて「耳鳴り」を感じました。

自分がおかしくなったのかと思うぐらい、ノイズの原因探しをしました。

結論は、人は脳からのノイズを聞いているのではないかと思い込みました。

無響の環境にいると、自分のノイズがうるさくなるのかもしれないが

ノイズを無意識で受け取っていて、

いちいちうるさいので、聞こえないようにしている。

 

ということで、空調や部屋のきしみなど、

たくさんのノイズを聞きながら、人は音楽を演奏していて

最近のデジタルシンセの綺麗な音こそ、ノイズがなさすぎて不自然ではないか。

そのように思ったのですね。

アナログシンセのノイズを、人間はノイズと気にしていないのではないかと。

 

さて、ノイズのむかしならではの癖ってのは

上部にある、Sequencial CircuitsのProphet-5ですが、

YMOで聴いていたような音がしない。

このモデル、中期型Rev.2と、後期型Rev.3がありまして、

自分ものは後期型でとても見た目も音も綺麗です・・・が。

 

先日、中期型モデルと同じ音色で比べることがありまして、

誰もがわかるぐらい音色が異なるのです。

ノイズが多く、まとまりがないのは、中期型。

でも、きらびやかな金属音、高域の味があるのも中期型。

プリアンプが異なるそうです。

新しい方が良いとは限らないのが、シンセサイザーの難しいところ。

 

YMO=教授のサウンドを聴いていて、

当時の80年代のポストモダン論になりそうですが、

新しいものが、人にとって美しいわけでもない。

その人の生活、経験、生き様で、醜いもの、ノイズも味になる。

否定していたことも、良いこととなる。

多分、音をクリアに、ノイズを下げたら、現代の私たちの感性に響くであろう

良い音まで取れちゃったのでしょうね。

 

美意識ってのは難しいようで、ヴィンテージの面白さとでも。